クライエント中心療法 自己理論

クライエント中心療法では、クライエントが自己一致し、自己実現傾向を発揮していけるようになることが目的の一つとなっている。
その過程は自己理論として理論化されている。
自己理論では、心理的な不適応を経験と自己概念とのズレによって説明する(図1)。

図1では、左手の方が自己概念と経験とのズレが大きく、一致面積が狭い。
このような状態を自己不一致と呼び、クライエント中心療法では自己概念と経験との一致面積を増やすことによって不適応を解消していくのである。
例えば、「自分は絶対にテストで100点取れるはずだ」と思っているA君と「90点とれればいい方だ」と思っているB君がいたとする。そしてこの二人がともに実際のテストで89点取ったとする。
この場合、A君は「絶対に100点」と思っていた分、89点しか取れなかったという経験は、自己概念とかなりの解離があるため、自己不一致を起こす出来事となる。そのため、A君は不安や心配の気持ちが生じ、動揺することが予測される。
一方、B君は「90点とれればいい」と考えていたので、89点の結果は自己概念との解離は少ない。
そのため、A君のような動揺は少ないことが予想される。そればかりでなく、もしかすると「おしかったな、もう少し努力すれば次は90点取れるかもしれない。よし、次こそは90点取ろう」と自分の能力の向上に努めようと動機づけられるかもしれない。もしそうなったとしたら、それこそが自己実現傾向の促進であると言える。
この例のように、自己概念と経験とのズレが大きいと、それだけ心的な不安定を引き起こすリスクが高まるのである。
そのため、クライエント中心療法では、クライエントが自己概念を柔軟なものにし、経験に開かれていけるように援助していくのである。
なお、自己一致した人間のことを自己理論では、十分に機能した人間と呼ぶ。
突き詰めて述べれば、クライエント中心療法は、十分に機能した人間へ近付くことを目指した心理療法なのである。こうして内面の統合がなされると、現実的な行動や対処の在り方が適切なものへと変化していく。
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カテゴリ: [心理学]臨床心理学
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