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事例で学ぶ働く人へのカウンセリングと認知行動療法・対人関係療法 

働く人へのカウンセリングとCBT・IPT

働く人へのカウンセリングと認知行動療法・対人関係療法

オススメ度 ★☆☆☆☆

認知行動療法、対人関係療法それぞれを個別に記述した図書は多くあるが、この二つをメインにして記述した図書は今までなかったであろう。
また、私は日々認知行動療法も対人関係療法も医療機関で実施している心理師であり、以上の理由から本書にはとても興味があり手にすることとした。

ただ、結論から申し上げると、著者の対人関係療法への誤解が酷すぎて話にならなかった。これを読んだ読書が対人関係療法への誤解を深めないことを祈るばかりだ(というか、対人関係療法を知りたいなら、本書は読まずに臨床家のための対人関係療法対人関係療法総合ガイドを参照した方が絶対に良い)。
認知行動療法に関しても色々と突っ込みたいところがあるが、今回は対人関係療法に関する部分だけを下記する。


対人関係療法はよく、「対人認知を扱う」「アサーションの亜種」と誤解されている。これらは全くの誤解であるということは先ほど紹介した図書を読めばすぐに分かる。

しかし、本書は正にその誤解を地でいってしまっている。これは大変な問題である。

誤解していると思われるポイントをあげると切りがないが、特徴的なものを挙げると
・対人関係療法では認知を扱わないのに、あたかもそれを扱うかのような図が示されている。

・「病者の役割」を患者に与えるのが対人関係療法の主要な戦略であるため、対象者は自ずと診断基準を満たす者となる。しかし、本書に登場するクライエントは必ずしも診断基準を満たしていない。

・対人関係療法の主要な技法であるコミュニケーション分析が本書でも登場するが、全くコミュニケーション分析できていない。

・コミュニケーション分析に続く、決定分析やロールプレイが行われていない。

・フォーミュレーションがあまりにもお粗末(「役割の変化」でフォーミュレーションできそうなケースでさえ、「これは対人関係の問題ではない。だからCBTだ!」とトンチンカンなことを言っている)

etc…

私は水島先生の図書を中心に、対人関係療法の本は全部読んでいる。水島先生の対人関係療法研究会にもほぼ毎回参加費(結構高い…!!)を出してケース発表もしている。
このような日々の積み重ねによって、我々は対人関係療法を間違った形で流布しないように懸命に努力しているのだ。本書はそんな我々の努力を冒涜するものであると言える。非常に不愉快だし、悲しくなった。


「働く人の…」と本書のタイトルがあることで、私は「きっと企業へのコンサルなどもするのだろう」「重要な他者として会社の人達を巻き込んで、対人関係療法らしさのある実践を示してくれるのだろう」といことを期待したが、それもなかった。
著者はクライエントの取り巻く人間関係を「敵か味方か」で捕らえるらしいが、少なくとも対人関係療法ではこのような考え方をしない。関係に不和がある相手がいたとしても、それは「敵」ではなく、あくまでも「期待のズレ」としてとらえるのだ(つまり、相手の人格に焦点づけるのではなく、相手とのコミュニケーションの相互作用に焦点づける)。


「認知行動療法・対人関係療法の“エッセンス”を活かしたカウンセリング」であればより正確なタイトルであったであろう。しかし、本書のタイトルは「働く人へのカウンセリングと認知行動療法・対人関係療法」であり、ならば理論は正確に記述する必要があるのではないだろうか。

大学の教授だから、理論は正確に記述してくれるだろう(というかそれが仕事ではないのか)。と期待していたが役割期待にズレがあったようだ。

ただ、本書を読む限り、学者としてはどうかと思われるが、実践上での振る舞いは非常にサポーティブであり、人としてはよい人なのだろう。著者の人間味に触れたいファンがもしいるのなら、その人には読む価値はあろう。ということで、その分の★を一つつけた評価としたい。
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カテゴリ: [実践向け図書]認知・行動系

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反省させると犯罪者になります 

反省させると犯罪者になります

反省させると犯罪者になります

オススメ度 ★★★☆☆

犯罪を犯した受刑者への支援をしている著者が、自身の実践を元に罪を犯した者への対応の在り方を説いたのが本書である。
本書のいわんとしている論理は極めて明快である。

その論理は

「罪を犯したものは、その罪を犯すだけの不満などの鬱積した気持ちがある。その気持ちを吐き出してもらう前にただ反省させて『はい、これにてめでたしめでたし』としてもいっこうに問題は解決しない。こんな反省を促すだけのことをし続けたら、その人やその子孫はいずれ必ず犯罪者になる」

といったものである。
この論理で本書全てが構成されている。(ので、個人的にはこのレビューさえ読めばそれでOKだと思うし、どうしても内容が気になったとしても少なくともお金を出して手に入れるほどではないように思う)

犯罪を犯した時の人の心理は、「悪いことをした」という反省よりも、「やってしまった」と自分のことを考える事の方が先に立つ。そのため、罪を軽くする手はずを考えたり、言い訳を考えたりするのでいっぱいいっぱいになってしまう。
その心理状態の時に「被害者のことを考えなさい」と反省を促しても、それは「自分にとって有利なように」としか考えられないので、表面上の反省に終始してしまう。ゆえに、まずは「どうして犯罪を犯さざるを得なかったのか」とじっくりと自分自身の内面に向き合う必要がある。


著者のいわんとしていることは、論理的には非常に理解出来る。

しかし、本書にはそれを裏付けるデータが一つもない。他人の論文データには辛辣な批判を浴びせるのにもかかわらずである。これはフェアではない。
従来の反省を促す教育と、著者が提唱する教育を受けたそれぞれのグループの再犯率や再収容率を調べれば簡単に分かりそうなものであり、それほど難しい話ではないと思うのだが。データがない限り「著者がそう思っている」という感想や確証バイアスでしかない。

もちろん、他のところでデータを出しているのかもしれないが、少なくとも本書にはないということで、本書の評価はその分★を一つマイナスにした。
また、内容自体は「同じ論理」であり、内容が豊富というわけではないために更に★を一つマイナスとした(同じ論理でもそれを裏付けるデータが豊富にあれば説得力は増すのだが、それもないので)。

カテゴリ: [実践向け図書]その他

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認知行動療法トレーニングブック 

認知行動療法トレーニングブック

認知行動療法トレーニングブック

オススメ度 ★★★★★

本書はそのタイトル通り、認知行動療法を基礎から応用までの一通りを学ぶことを意図してまとめ上げられたものである。DVDも付属品としてついており、視覚的な学習も出来るのが大きな特徴となっている。

本書は「認知の修正」「誤った認知」「暴露」など、古典的な言葉遣いがされており、その点は残念である。そのため、「認知の幅を広げる」「認知の癖」「曝露」など、必要に応じて脳内で再構成しつつ読むと良いと思われる(「誤った認知」と言われて喜ぶ患者/クライエントはいないので、こういった患者/クライエントを傷つける言葉を選ばないのも臨床家の努めだと考える。臨床家には言葉の技術がベースとして必要だろう)。

上記のようなやや残念なことはあるものの、ここまで丁寧にしっかりとCBTに向き合った書籍は他に例を見ない。CBTに興味のある大学院生からCBTを実践中の中堅当たりまでの臨床家にとっては、学ぶところ大だと思われる。
また、DVDを見ながら仲間内での勉強会を実施するのも面白いかも知れない。

個人的に、本書で特に印象に残ったのが、「転移」「逆転移」について触れられているところである。
本来、これらは精神分析の文脈で語られる事が多く、CBTの文脈では無視されるか、酷い時には卑下されるかであった。

しかし、本書では「治療関係のなかで再演」されるものとして前提し、しっかりとクライエントの認知行動をアセスメントするための情報として捉えている。

もちろん、同じ「転移」という言葉でもそれが精神分析の文脈で用いられるのか、本書のようなCBTの文脈で用いられるのかによって、その意味するところは微妙に異なってくるだろうし、精神分析プロパーの方からすると違和感を感じるかもしれない。
とはいえ、「CBTだから転移は起きない」と考える方が不自然であることは間違いがなく、その起きたものをどう治療に活用するかはそれぞれの文脈で異なってこざるを得ない。ゆえに、CBTの文脈であろうが「転移」「逆転移」についてもしっかりと学習することはとても有益だろう。

今まで私が読んだCBT系の書籍に「転移」「逆転移」について書かれたものは(おそらく)なかったので新鮮であった。


このように、本書には他にはない特色を兼ね備えつつ、基礎から丁寧にCBTについて記述され、DVDで視覚的な学習もできるので、とてもオススメである。

カテゴリ: [実践向け図書]認知・行動系

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知層その9 

今年度読んだ本のまとめです。

ブクログその1

ブクログその2
※途中から本を並び替えるのが無性にめんどくさくなったので二つにわけました。今年度分は「動機づけ面接 上」から「ポリヴェーガル理論入門」まで。


【再読】
臨床家のための対人関係療法クイックガイド
アドラー”実践”講義
嫌われる勇気
幸せな劣等感
コーチングの技術
DSMー5虎の巻
予診・初診・初期治療
動機づけ面接法
事例で学ぶ認知行動療法
スキーマ療法
児童養護施設の心理臨床
摂食障害の不安に向き合う
トラウマ・ケア
摂食障害から回復するための8つの秘訣
精神分析治療で本当に大切なこと
方法としての面接
臨床行動分析のABC
わかったつもり
身体はトラウマを記録する
精神科臨床における心理アセスメント入門
神田橋條治 精神科講義
神田橋條治 医学部講義
「現場からの治療論」という物語
精神力動的精神療法
動機づけ面接を身につける


合計すると新しく読んだものが151冊、再読したものが25冊の176冊。

あまり冊数を意識していませんでしたが、満足いく程度には読めたかと思います。
「読みたいな」と思える本が今のところないので、来年度は再読本がメインになるかもしれません。

カテゴリ: [心理系オススメ図書]知層(1年間で読んだ本)

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ポリヴェーガル理論入門 

ポリヴェーガル理論

ポリヴェーガル理論入門

オススメ度 ★★★☆☆

本書は、対話形式でポリヴェーガル理論について書かれたものである。

ポリヴェーガル理論とは、心理的な経験と身体的な反応の間には重要なつながりがあると規定し、人が適切な適応的行動をとるための神経的基盤として、自律神経がどのように機能するかを説明するものである。

この理論の神髄は「安全を求めることこそが、私たちが成功裏に人生を生きていくための土台である」(P.7)ということにあるらしい。
ここでいう「安全」は認知的に理解する安全ではなく、我々の身体が「安全だ」と感じることをより重視している。これは「行動と認知における、客観的で計測可能な指標を重要視し、「感じること」に対する主観的な反応は顧みないという姿勢」(P.10〜11)へのアンチテーゼとなっているようである。

この安全感は我々の行動と、他者との関わり方に影響を与える仲介変数としての機能をもつ。
また、その逆も言え、信頼に満ちた社会的関わりを持つことによって、安全を感じることができる。「ポリヴェーガル理論では、他者との絆を形成し、互いに恊働調整しあうことは、我々人間にとって必要不可欠な生物学的必須要件であると説いている」(P.29)のだ。


ポリヴェーガル理論では、トラウマに関する考察も今までの理論とは多少異なった見方をとる。
トラウマ関連障害はストレス性疾患に分類されているが、その事はトラウマを神経生理学的状態として解釈する上で大きな問題をもたらしてしまう。
本来、トラウマ反応は闘争/逃走反応が取れない状態に陥った際に生じるもので、その防御システムとしては「不動化」と「解離」となるのだが、ストレス性疾患としてみてしまうと、交感神経の活性化のモデルでトラウマを見てしまう過ちをおかすこととなってしまうのだ。

ポリヴェーガル理論では、交感神経ではなく副交感神経、特にその主要な部分である迷走神経を重視するのであるが、この理論の独自的視点なのが、迷走神経を人を保護的にするもの(快適)と、「無呼吸」などを引き起こす可能性のあるもの(死)との二種に分けて考えているのである。前者は有髄、後者は無髄の迷走神経回路である。(そもそも、ヴェーガルとは「迷走神経の」を意味し、ポリとは「複数の」を意味している。)


系統発生的に見ると、先に無髄の神経回路が発達した。爬虫類も持っている回路である。爬虫類にとって無髄の回路を作用させ生体を「シャットダウン」させることは適応的であった。哺乳類に比べ、酸素をそれほど必要としないからである。エネルギーを保護する上では動かないのが一番である。

一方、哺乳類である人間は違う。
生命の危機に瀕し、それでもなんとか生き延びようとエネルギー節約のために無髄の回路を作用させると自分のことを制御できなくなってしまう(それだけ我々は正常な作動を行う時多くのエネルギーを使っているのだ)。
ただ、その反応はトラウマ時には非常に適応的な反応であったとはいえ(恐ろしいことが起きたときに気を失ったり、解離している方が恐ろしさを回避できる)、「神経系には、「不動状態」からうまく抜け出す経路がない」(P.96)ため長期的に見ると不適応のもととなってしまう。



では、どうすれば我々は安心感を得ることができるのであろうか。

著者は、安全であるという「ニューロセプション」を起こさせるような声の抑揚を使うことが重要と考えている。ニューロセプションとは、身体が直感的に感じる判断のことを言う。(我々は本能的にジョニー・マティスのような韻律に富んだ声に安心感を覚えるらしい。)

また、顔と顔を合わせながらやり取りする(社会交流システム)と身体的な防御反応が抑制させるのでより安心感を与えるという。

「有髄の迷走神経を調整する脳幹領域は、顔や頭の筋肉を調整する脳幹領域と結びつきました。この脳幹領域は、中耳筋を使って聞く能力、喉頭・咽頭の筋肉を使って発生する能力、頭を使って感情や意思を表現する能力を制御しています」(P.99)というのがその根拠となっている。


要するに、我々は安心をニューロセプションすることで、社会的な援助や行動の神経経路が活性化され、そのことでその経路と神経経路を共有している「健康」、「成長」、「回復」を促進する神経経路を活性化させるのである。


以上のように、ポリヴェーガルモデルは臨床家に新しいトラウマケアの可能性を示してくれる。
著者曰く、安心感を持てないという点でトラウマと発達障害は同系統に位置するものと考えられるらしいので、発達障害ケアに関するヒントも得られるであろう。実際、複雑性トラウマと発達障害の区別は臨床上困難なことも多く、両者に共通する理論を知っておくことは臨床家にとってとても有益であろう。

カテゴリ: [実践向け図書]その他

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