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モーズレイ摂食障害支援マニュアル 

モーズレイ

モーズレイ摂食障害支援マニュアル

オススメ度 ★★★★★

「本書は、年齢や診断を超えて、家族と共にどのように協力していくかについて述べた手引書である」(p.006)。
現在、摂食障害についてエビデンスのある治療法としては、過食症に対するCBTやIPTが挙げられる。しかし、拒食症に対しては強いエビデンスを示す治療法はない。そんな中でも家族を巻き込み、家族の役割に焦点を当てることは推奨されている。

本書は、このような現状にあって、特に拒食症に対するアプローチを体系化しようと試みている非常に意欲的なマニュアルとなっている。 
摂食障害全般に関わることをピンクの付箋、過食症に関わることを黄色、拒食症に関わるところを水色と、付箋の色を使い分けながら本書を読み進めたが、黄色に比べ水色の付箋がずいぶんと多く使われることとなった。

モーズレイ付箋


拒食症はその症状の性質上、外見的特徴からすぐに病気であることが判断されてしまう。それゆえに家族は多くの偏見にさらされやすく、傷つく事も多い。
事実、「精神障害者の家族研究によれば、摂食障害患者の家族の負担は、重度の精神病性障害患者の家族よりも大きいという指摘がある」(もしも「死にたい」と言われたら p.8)。
その家族の傷つきは、患者への不適切な行動へと繋がり、ますます患者の症状が悪化する、というような悪循環にも陥りやすい。

本書を読むことで、摂食障害についてはもちろん、患者の心理、家族の心理、家族のサポートの仕方、家族への心理教育内容などを非常によく勉強させていただける。

「摂食障害の正確な原因は分かっていない(p.077)」。ゆえに、摂食障害を引き起こし、持続させている要因に目を向けるべきである。
患者心理としてきちんと理解しておく必要があることは、この病気の維持要因は決して“食の問題ではない”ということであろう。
摂食障害は食べ吐きや絶食等の問題が目にいきやすいため、容易に食の問題にばかり焦点づけられてしまいがちである。しかし、この病気を維持しているのは、対人関係の問題であったり、感情表出の問題であったり、自尊心の低下が問題であったりするのである。

従って、食の問題の改善にだけ力を注いでも、効果が出ることはない。もし出たとしても、それは一時的なものに過ぎない。

※本書の感想からはズレるが、私は本書を手に取る以前、仲間内の勉強会でこの点を論じたことがあるので、参考にして頂けると幸いである。本記事の最後にその資料に若干修正を加えたものを挙げておきたいと思う。




家族への支援としては、本書では、摂食障害の心理教育と共に、家族がCBTのモデルによって自分の情緒的反応を機能分析し、動機づけ面接法のスキルを駆使して患者を温かく受容・理解できるように促していくことが重視されているようである。
それともに、「変化についての超理論モデル」を共有し、患者の健康行動変容の動機が今どの段階にいるのかを見定め、その段階に応じた関わりを実践していく(詳しくは本書 第7章参照のこと)。

この姿勢を(エッセンスを、とうことであるにせよ)家族にまで求めるのはややハードルが高いようにも思えた。しかし、摂食障害、特に拒食症の治療はそれだけの労力が必要だと言うことであろう。

このためには、治療者がCBTや動機づけ面接をマスターしておく必要があることは言うに及ばない。
動機づけ面接の著書には動機づけ面接法医療スタッフのための動機づけ面接法という優れたものがあるので、臨床家には必読であろうと思われる。

後者の方もいずれレビューしたいと考えている。


とにかくも、摂食障害で悩み苦しむ方の支援にあたっている臨床家には本書は必読であろう。これほど家族と恊働して摂食障害患者を支えるアプローチに真摯に取り組んでいる本は恐らく他に無い。

かなり厚くて読むのは大変なのであるが、読むだけの価値はある。非常にお勧め。

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カテゴリ: [心理系オススメ図書]実践向け

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現実はいつも対話から生まれる 

現実はいつも

現実はいつも対話から生まれる

オススメ度 ★★★★☆

普段、「エビデンス」が協調されがちなCBTやIPTを実践する事が多いものの、ナラティブにも関心があり(この二つは決して対立するものではないのだが)、タイトルに惹かれて手にとってみた。

今まできちんと社会構成主義について学習したことがないのだが、本書はそれが非常にわかりやすくまとまっており、同時に考えさせられることもあって、読了感は非常によいものであった。

「唯一の真実は無い」という社会構成主義の根幹の哲学に、何度も頭がグアングアンと揺さぶられ、知的な好奇心が相当刺激された。

「批判する人とされる人の双方がたいていは、自分のしていることが『善』だと信じて(p.56)」いるが、そうなるとお互いの正義をぶつけ合うあけで、敵対心が広がっていってしまうだけである。
双方の正義や善を受け入れ、かつ、お互いを批判的に考える事が出来れば、異なる意味づけの壁を乗り越え、新たなステージに立つ事が出来るはずである。

唯一の絶対を固定させる「個人主義」ではこの壁を乗り越える事が出来ない。互いの「関係」の中で、相互を補完し合うからこそ、そこに意味のある「現実」が生まれるのである。

こういった主張が具体例をも挙げながら繰り返しなされている。翻訳書にも関わらずとても訳が上手いのも、理解を加速してくれるので、大変ありがたい。

本書には第三章において、「社会構成主義と心理療法の変化」という節があり、心理療法に携わる者にとっては大変興味深く読めるところとなっている。



一方、社会構成主義は「個人主義」というアンチテーゼの存在無くしては、その哲学の構成を図れないのではないか、という疑問も生じた。

著者は大学教授として学生を指導する時のスタイルを「『学生の頭の中に知識を流し込む」ことが教師の務めだという考えとは決別(p.111)」し、ディスカッションが行われる形式のものへ変えていったという。そうする事で学生は「対話の中で自らのスキルを活用できるように(p.111)」なるとのことである。
しかし、ここでいう「スキル」はいったいどこで構築したものなのだろうか?もちろん、関係性の中で自然と得られる知識もあるかもしれない。しかし、それ以上に、従来型の「個人主義」に基づく「教え」を通してしか得られないスキルもあるはずである。

要は、「乗り越えるためには」、まず「乗り越えるもの」の存在が不可欠なのである。
社会構成主義は実は容易に、社会構成主義的なものとそうでないものという二律背反の原理に陥ってしまう危険性があるのではないだろうか。そして、その反する理論同士は共依存関係にも容易にはまり込む危険もあるのでは、と思われる。

また、「良くない感情というのは、うまく構成できなかった結果(p.120)」とあるように、社会構成主義はネガティブなものに対する脆弱性があるようにも感じた。ナラティブセラピーやブリーフセラピーで多用されるミラクルクエッションや例外探しなどは、その現れのように思えなくもない。心理療法では、時にそのネガティブな感情の意味合いを考察し、しっかりとそれと向き合う必要があることもある。

「良くない感情だ!構成しないと!」といった排他精神へまで飛躍すると、社会構成主義の中に社会構成主義でなくする要素が内包されているということとなる。まるでフォースのダークサイドかのようだ。


とはいえ、本ブログの読者のような心理臨床家がここまでのことを考える必要はないだろう。先述したように、本書は非常に読了感も良い。
社会構成主義の「他人の伝統の中に肯定的な要素を見つける事ができれば、相互探索によって新たな生き方が生まれやすくなります(p.115)」という主張は、どの臨床行為を実践しているとしてもとても参考になる。


カテゴリ: [心理系オススメ図書]実践向け

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精神分析治療で本当に大切なこと 

精神分析治療

精神分析治療で本当に大切なこと

オススメ度 ★★★★☆

著者である青木 滋昌先生の研究会に参加する機会があったので、再読してみた。恐らく三回以上は読んでいると思う。

本書は、私の精神分析のイメージをごろっと変えてくれた図書である。
ポスト・フロイト派では、フロイトの精神分析(欲動論)はもちろん、自我心理学、対象関係論、自己心理学をバランスよく統合し、患者の自我状態や治療者の逆転移感情等に応じて柔軟に理論を使い分ける。それは決して都合良く折衷しているものではない。各理論に精通するスーパーバイザーに教育分析を受け、治療者となる者自身も各理論の造詣を深め、自身の問題について克服しなければ、ここまで見事な統合には至らない。

理論に迎合するのではなく、それを統合する核として絶対的においている基準が「患者のために」であるために、知的な理解の冷たい介入ではなく、非常にハートフルな介入になっている。

中でも、著者が協調する姿勢は「無意識内容に触れる時にも、いきなりそれに触れるのではなく、必ずセッションの中で治療者との二人の関係を通して、意識レベルから少しずつアプローチする」という点と、「転移関係の中で現れる患者の反復強迫のパターンをなんとか食い止めることで、新しい情緒体験となるように」という点であろう。
こういった姿勢から語られる治療者の言葉は、とても温かく自信にあふれている。

心理療法において心に留めておかなければならない大切なことが学べるため、精神分析をオリエンテーションにしていない臨床家も本書を手にとってみることをおすすめする。

カテゴリ: [心理系オススメ図書]実践向け

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AEDP 人を育む愛着と感情の力 

アエDP

AEDP
オススメ度 ★★☆☆☆

本書は、本邦で初めて創始者であるダイアナ・フォーシャがAEDPについて体系化した書籍を翻訳したものである。従って、現時点においては、AEDPを学ぶものにとってそれを日本語で学習できる数少ない機会となっている。そういう意味では大変価値のある本となっている。

AEDPとは、Accelerated Experiential Dynamic Psychotherapyのことであり、加速化体験力動療法と呼ばれている。
AEDP研究所ファカルティ(教員)の花川ゆう子氏によれば、「AEDPは感情理論と愛着理論をもとに、病理への注目ではなく誰しもにある変容力の活性化を目指す新しい心理療法です」とのことである(参照)。

近年注目されている心理療法は、どちらかというと理性や認知的側面に訴えるものが主流であるように思う。このため、感情を多面的に扱うアプローチを学習することは、臨床家としてある種の「原点回帰」とでも言えるのではないかと思い、読み進めてみることとした。
こちらのワークショップにも申し込んだため、予習をかねていたのもある。


さて、本書の感想であるが……

AEDPは感情に焦点を当て、アタッチメント理論との結びつきが強くあり、確かにクライエントの感情を扱う面においては新鮮で、また相当の力強さを感じる事が出来た。
共感的な態度を取る臨床家としてのスタンスも、常に感情修正体験を促すことや、安定したアタッチメント関係の構築のための努力に費やされるなど、参考になる面は多々あった。


ただ、私にはAEDPセラピストの原始的万能感を感じずにはいられない箇所がいくつかあり、本書の価値を若干割り引かされてしまうこととなった。

例えば、「クライエントがセラピストを『ベタベタしている』と非難し、セラピストの共感を軽視したとする。その軽蔑は防衛感情の一つである。軽蔑することによって、それまでの人生で心的に近づく体験を逃したという悲嘆から自分を守り、誰かに評価されたいという深い渇望を認めることにまつわる無防備さから守っているのである(p.180)」という箇所。
終止このような形で、一つのクライエントの言動から、そのクライエントの成育過程での心性をあたかも断定するかのような見立てを述べるのである。果たしてそんなに人の感情や心理は単純に見立てられるものなのだろうか。

また、「『あなたは私が今ここに一緒にいることを感じられますか?』AEDPセラピストが頻繁に口にする介入だ(p.389)」とのことであるが、この台詞も私にはセラピストの原始的万能感の反映であるように思えて、違和感がある。
二者関係の心理学としてのスタンスに、私には戸惑いがある。


更に残念な事に、本書の構成にも問題点が多くあったように思う。

AEDPは、コア感情、コアステイト、カテゴリー感情、ヒーリング感情など、多くの特殊な専門用語が登場する。
だが、こういった用語の定義がかなりなおざりにされている嫌いがあるのである。
定義を記述する前の専門用語がいきなり本文中に飛び出し「(次章で取り上げる)」などと述べ、平気で話を進めていく。こういったことがしばしばあり、多くのAEDP初学者の読者は置いてけぼりを食らうことになってしまう。

驚くべき事に、本書にはAEDPの定義すら書かれていない!!

「波長合わせのできるセラピストであれば、コア感情状態には心を動かされ強烈に感じられ、強い感情的・共感的反応が喚起されるのを感じるだろう。セラピストはクライエントが感じているものに近いものを感じ、クライエントが体験しているものに苦痛、喜び、思いやりを感じる(p.183)」とあるが、読者との波長合わせはあまり上手ではないように感じてしまう。


以上の問題に輪をかけて問題なのは、日本語訳がこなれていないことである。
英文に忠実に訳そうとしたのか、それが裏目に出ており日本語として相当不自然なものになっている。「硬い」という印象をどうしても受けてしまう。

例えるなら、「An artist needs the artistic strength to resist compromise」という英文を「芸術家は、簡単に妥協しない芸術的な強さが必要である」と訳すかわりに、「芸術家は妥協に抵抗するための芸術的強さが必要である」と訳すような硬さである(上記英文と訳はちょうど手元にあったターゲット1900から引用させていただいた)。


訳者と監訳者が分かれており、訳者は心理学部の出身ではなくAEDPの専門家でもなさそうなので、このあたりに原因がありそうである。AEDPに精通している人の訳とは考えにくい。
恐らく訳者に訳をほぼ丸投げし、監訳者はあまり訳された原稿に手を入れなかったのではないだろうか。


以上のように、特に私のような初学者には用語の理解が難しいし、構成も不親切であるし、訳も硬いため、AEDPについての満足いく学習は、本書を通じては困難なのではないかと思う。

もしAEDPに関心があるのなら、日本人によって書かれたAEDP本が出るのを待つか、より日本語らしい訳が出来る訳者の翻訳書を待つか、AEDP JAPANが行っているトレーニングを受けるか(参照)などをされるのがよいのではないかと思う。本書を購入することを、私はあまりお勧めしない。

カテゴリ: [心理系オススメ図書]実践向け

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摂食障害から回復するための8つの秘訣 

摂食障害8

摂食障害から回復するための8つの秘訣

オススメ度 ★★★★☆

本書は、過去に拒食症を体験した2人のセラピストによって書かれた、摂食障害を克服するための指南書。
実際に著者たちがここに書かれている方法で回復し、また、その方法で多くの摂食障害に苦しむ人たちを救ってきたという実績から、説得力の富むものとなっている。

摂食障害治療にエビデンスのある心理療法の主立ったものには、対人関係療法や認知行動療法がある。
私は実際にこの二つのアプローチをくししながら、摂食障害に苦しむ患者(クライエント)と関わらせていただいているが、本書に書かれている内容はこの二つのアプローチを上手く取り入れたような形となっている。

本書の主張を私なりにまとめると、下記のようになるだろうか。
・治った時の事をよくイメージする。
・症状が出た時のことを具体化する(人に話すなどをして)。
・病気の部分と健康な部分を分ける(病気の部分は本人の一部なので本人より強くはならない)。
・食べ物の問題ではなく、「本当の問題」がある。
・思考−気持ち−衝動−行動という連鎖がある。歪んだ思考があると問題行動が生じやすい。
・感情に気づき、そのままにしつつ同時に合理的思考を持てるように。
・自分の内面にある食べ物の決まりが人生をどう制限し、どんな気持ちにさせるのか冷静に理解するようにする。
・苦しい気持ちや日々の問題に対処するときに周りの人たちを頼る。
・精神性や魂に対してマインドフルになり、それと繋がる。

本書にも度々記述があるが、本書を読んだだけでは残念ながら摂食障害を治療する事は難しいだろう。
症状がひどい場合はきちんと医療機関を受診することをお勧めする。摂食障害は必ず治る病気である。

過去に症状を治療した方や、それほどひどくない人は本書を読んで日々の生活に上記の秘訣を取り入れるとよいだろう。

本書は特定のアプローチに基づいた指南書ではないが、摂食障害治療に関わる臨床家が読んでも参考になるところは大だと思う。

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